母は最近、食べたことを忘れることがある。
昨日は夕食にカレーを作った。
私と同じように盛りつけたカレーライスを、ゆっくりゆっくり、最後まできれいに食べた。
ちょっと多くなかったか聞くと、「正直ちょっと無理したけど、残しちゃいけないと思って」と答えていた。
で、30分後。
お母さん、ご飯食べたっけ?
そろそろ、ご飯食べようか?
物忘れと認知症の違いを説明するとき、よく例として挙げられるのがこれだ。
食べた内容を忘れるのが物忘れ、食べたこと自体を忘れてしまうのが認知症。
はじめて母のこれを聞いた時、ギョッとしたと同時に『本当に、このセリフ言うんだー』と驚いた。
読み漁った認知症関連の本に、共通して書かれていることがあった。
認知症の進行にともなう「何か」が起こったとき、例えば、物盗られ妄想とか、トイレの失敗とか、家族がショックを受けるような出来事が起こったときは「そうきたか」と思えばよい、と。
これは、わかる。
「そうきたか」には、いったん受け止める余裕がある。
「どうして??」「なぜ??」と思うより、ショックや悲壮感を感じにくい。
「それならこっちは……」と、次の手につながる言葉でもある。
スポンサーリンク
母に認知症の兆しがみえた時はショックだったし、戸惑いしかなかった。
いろんな感情が入り混じって、とにかく悲しかった。
最近になってようやく、「認知症になった母」をニュートラルな状態でみることができるようになった気がする。
お母さん、さっきカレーライス食べてたよ。ほら、ちょっと食べ過ぎたとか言ってたけど、おなか一杯になってない?
ええー??ホントに?いやだ、覚えてない……苦笑
こういう時は、できるだけ何でもないように返したほうが良い。
カレーはしっかり食べていたけれど、口ざみしくなったのだろうか。
もしかしたら、洗いものをするのにキッチンに立つ私をみて、夕飯の支度をしているのかと勘違いしたのかも。
とりあえず、りんごをむいて母の前に置いたら、黙ってシャリシャリと食べていた。
『食事をしている写真を撮っておこうかな』とも思ったけれど、証拠を突きつけるみたいなのもアレかな……と思ったり、全く記憶のない自分の姿を見たら余計に混乱するかな、と思ったり。
そのうち「食べてない」と言い張るような症状が出てきたら、また対応を考えよう。
余談だけど、実家にいる時のブログは実に書きにくい。
今はリビングのテーブルで、となりに母が座っている。
私がパソコンに向かっているのが気になるらしく、さっきから何度も「何してるの?」と聞く。
かまってほしいのだろう。
とはいえ、私もずっと母に付き合ってテレビをながめているのもつらい。
時おり、母がパソコンをのぞきこもうとするのも落ち着かない。
見えないとは思うが、「認知症の母」について書いているのだから、多少の気まずさはある。
ということで、うまくまとめられなかったけれど、今日のところは終わります。