数日前から実家に帰省。
昨日は母のかかりつけ医院の予約日で、朝9時半頃、2人で玄関を出た。
駐車場と道路のちょうど境目あたり、やや敷地よりに、黒い小さなものが落ちている。
そういえば今朝、ゴミを出しに玄関に出た時からあったような……
『なんだ?帰ってきたら拾っておかなきゃな』
2時間後、病院から戻り、駐車場の前を通る。
さっきと同じ場所に、やっぱり黒い物が落ちている。
ちょっと近づいてみる……
ウッ……コウモリだ。
思わず身構えて、身体が固まる。
あまりに小さく身体をまるめているので、ゴムの切れ端のように見える。
が、よく見るとフワフワした身体と小さな手足、翼がみえる。
もう動いていない。
この炎天下、暑さにやられたのかもしれない。
かわいそうだが、やっぱり気味が悪い。
となりの母がいろいろ言い出すと面倒なので、コウモリのことは口に出さず一旦家の中に。
『どうしよう。どうやって処分したらいいんだろう』
とりあえず、市役所に電話をかける。
以前、家の前の道路でカラスが死んでいた時に回収にきてもらったからだ。
窓口に出た女性に事情を伝える。
しばらく保留になった後、ふたたび女性の声。
「後ほど回収に行きますね。敷地内だと回収できないので、頑張ってなるべく道路側に出しておいてくださいね」
本当に、本当にありがたい。
ご親切にアドバイスまでいただいた。
アドバイスに従って、コウモリの死骸を道路側に移動させようと外に出る。
どんなに小さくても、生き物の死骸は怖い。
ウイルス、ばい菌も怖いので、帽子とマスク、手袋をはめ、その小さい身体を少しずらそうと、こわごわトングを当てた。
モゾ……モゾモゾ……
ひぇっ……!
まだ生きてる??
軽くパニックになりながら、再び市役所に電話。
「すみませーん!コウモリ動きました!まだ生きてます!」
「あ~、生きてると回収できないんです。ちょっと気持ち悪いでしょうけど、そのまま放置しておいてください」
せっかく解決したと思ったのに、予想外の出来事にうまく頭が回らない。
反応があったコウモリも、その場から動く気配がない。
相当、弱っているようだ。
『ややこしいことになってしまった、どうしよう……』
再び動かなくなったコウモリをその場に残し、家に入る。
『あのまま置いといたら、どのみち死んじゃうよな……』
『日陰に移動しておいたほうがいいのだろうか』
『暑さの脱水だとしたら、水分でどうにかならないだろうか……』
いちかばちか、霧吹きに水を入れて、コウモリの元へ。
炎天下でピクリとも動かないコウモリに、遠慮がちに、シュワッと霧吹きで水をかけてみる。
モゾモゾモゾ……と動きだしたので、数度霧吹きで水を吹きかけ、まわりに水をまく。
やっぱり水の力は偉大だ。
あんなに動かなかったコウモリが、ヨタヨタと懸命に日陰に向かって歩き出した。
最初は気持ちが悪かったが、こうして頑張って歩いているのをみると、命ある存在なのを実感。
壁際まで歩き、壁の存在を確認するように、何度か爪を立てて探っている。
どうにか、日陰になった駐車場の壁の部分によじ登った。
上まで登る力はないようで、下から10センチくらいの場所でじっとしている。
『あとはコウモリの生命力に任せよう』
もうこれ以上、私にできることはないと判断して、その場を離れた。
そのあと3度ほど、コウモリの様子を見に行った。
同じ位置で、まったく動いた様子がない。
気温は36度を超えていた。
『もしかしたら、夜までもたないかもな……』と思った。
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夜7時半をまわり、母といつもの散歩に外に出る。
すぐにコウモリを確認しに行ったら……いない!
あたりを見たけれど、力尽きて落ちている様子もない。
『良かった!自力で動いたんだ』
日中の暑いさなかをじっと耐えて、日が落ちて少し気温が下がったので動けるようになったのだろう。
改めて、コウモリが夜行性だということを実感。
あのまま炎天下に放っておいたら、暑さで死んでいたかもしれない。
水分を与えたことが間違いではなかったようだ。
少しは役に立ったようで良かった。
今回はたまたまコウモリだったけれど、これが鳥だったら、他の小動物だったら、猫だったら、犬だったら……
得体が知れないものは怖い、と思ってしまうし、実際に注意が必要だけれど、でも命あるものだし。
これからそんな場面に遭遇したら、オタオタせずに行動できるかな……とか、いろいろ考えてしまった。
何はともあれ、今回の件、無事に解決して良かった。