普段は遠距離介護ですが、月に1度は帰省して母のそばで過ごす生活を続けています。
一緒にいても、母は夕方になると決まってソワソワと落ち着かなくなります。
立ち上がって部屋をウロウロしたり、ブラインドから外の様子をのぞいてみたり。
どうしたのか聞くと、答えは大体同じです。
母「お母さん、ほら、ちょっと行って、ほら、あそこ見てこないと」
母の会話はとにかく「ほら、」が多いです。言葉がみつからないのでしょう。
単に言葉が見つからないだけでスムーズに行動に移すことができればいいのですが、
ウロウロ歩きまわった挙句、座ったり立ち上ったりを繰り返します。
そんな時の母は、途方にくれたような表情や、不穏な表情をしています。
行かなきゃいけないと思っている場所があるのに、それがどこか分からないのかもしれません。
そう思うと、母がかわいそうで切ない気持ちになります。
最初の頃は、私も落ち着かない気持ちになったり、イライラしたりしていました。
(私は昔からそばにいる人の気を吸いやすいのです。母の気は特に)
認知症の人が夕方になると落ち着かなくなる『夕暮れ症候群』という症状を知ってからは、夕方の母の言動にも動揺することが少なくなりました。
母のおかしな言動を目の当たりにすると、まず不安が先立つんですよね。
最初に不安や恐怖を覚え、それが制御不能だとわかると、今度は怒りの気持ちがわいてきます。
そして最後は決まって悲しい気持ちになるのです。
それを打ち消すために、認知症関係の本をとにかく読み漁りました。
認知症という病気を知って母を理解できれば、私自身が楽になると思ったからです。
施設に入った人によく見られる帰宅願望も、夕暮れ症候群の一つのようです。
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実際に母も、自宅にいるのに「帰らないと」と言ったことがあります。
そんな時に、近所を散歩することで帰宅願望を落ち着かせる方法があると知り、
私も母を散歩に連れ出すようになりました。
夕方は食事の支度などでバタバタしているので、母に「今は忙しいけど、後で散歩に行こう。その時にお母さんが気になるところも見てくればいい」と声をかけます。
そうすると母は「嬉しい」と行って表情を緩めてくれ、ようやく落ち着いて座ってくれます。
そんな姿を見て、私もまた落ち着きます。
足の悪い母はそう長い距離を歩けません。
夕飯もすませ、すっかり日が落ちてから、家の周りを15分程歩くだけです。
母と手をつなぎ、夜風に吹かれながらゆっくりゆっくり歩くのですが、晴れた夜は月が見えたり星を探したり、私にとってもなんだか気が休まるひと時です。
いつもは遠距離介護で離れている私にとって、母のそばにいることの安心感を味わえる時間でもあります。
最近は、母に夕暮れ症候群のような言動があってもなくても、できるだけ夜のミニ散歩に出るようにしています。
母と一緒にみた夜の風景が、いつか隣から母がいなくなった時に、私にとって大切な思い出の一つになってくれるはずです。
・夕方の母の言動には慌てない・焦らない・怒らない
・こまめに夜の散歩に連れ出そう