昨日の朝、実家にいた兄から電話がかかってきた。
前夜、遅い時間に兄が帰宅したら、母がまだリビングでウロウロしていたという。
すでに日付が変わった深夜だったので、半分叱るようにして寝室にいかせ、自分も就寝したらしい。
で、今朝になってキッチンを見てみると、レンジの中のターンテーブルが外に出されていて、その上にトースターから外したと思われる謎の板(どの部分から抜き出したのかが分からない)が重ねてあったらしい。
その数日前にも、まな板が定位置から消えていたらしく、兄が探したとのこと。
「もう、いいかげんにしてほしいんだよ」と私に報告する兄の声は相当苛立っていた。
兄は、幼い頃からあまり母と相性が良くない。
大学を卒業してから県外に出たけれど、年に数度の帰省時でさえ、顔を合わせれば衝突していた。
母が兄の地雷を踏み、兄が激怒するのが毎回のパターンで、私からみれば『なんで、そうなっちゃうの~??』と理解に苦しむシチュエーションが多かった。
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今は仕事の関係で県外の自宅と実家を行き来しているが、なにぶん忙しいので、実家に滞在していても、母と顔を合わせるのは朝出かける時くらい。
母が認知症になってから兄もずいぶん母に対して優しくなったというものの、実際に母のケアをすることは到底無理だということは承知している。
実際に母と一緒に過ごせば、その言動にイライラしてしまうことも十分理解できる。
私も実家で母と過ごす数日間の間、ずっと穏やかな気持ちで接することができるかと言えば、難しいこともままある。
兄の電話の苛立った声は、おそらくすぐそばに座っている母の耳にも届いているだろう。
母の、萎縮した、でも納得いかないような、複雑な表情が目にみえるようだ。
とりあえず兄の話を聞いて電話を切り、兄が仕事に出かけた頃を見計らって母に電話をかけた。
母は5~10分前の記憶すら怪しくなっているが、自分が叱られたりしたことや嫌な気持ちはやっぱり残るらしい。
「お兄ちゃんに怒られた」
「お母さんが、余計なことをするんだと思う」と言う。
母が深夜遅くまでリビングにいて、備品や書類箱に整理されている書類を引っ張り出してしまうことは確かに困ることだし、なによりも睡眠は規則正しくとってほしい。
「お母さん、遅くまで起きているのは身体によくないし、あちこちなんでもいじっちゃうと、お兄ちゃんが使いたい時に困るからやめようね。お母さんがお兄ちゃんに怒られるの、お母さんも嫌だろうけど、私も嫌だしね」
そう話すと「うん、わかった」と素直にうなずいていたけれど、次の言葉にハッとして、胸を突かれるような気がした。
「お母さんにだって、気持ちはあるから」
そうなんだよね……
認知症になってから、無意識に母をコントロールしようとしていたけれど、母だって家の中のことが気になるだろうし、「こうしたい、ああしたい」っていう欲求だってあるよね。
当たり前のことなのに、『とにかく余計なことをせずに、黙って静かにしていてほしい』という残酷なことを、当然のように思ってしまっていた。
兄にはメッセージを入れた。
危険がおよぶこと以外は、できるだけ目をつぶってほしい、何か理解できない言動があっても、想定内のことだと受け止めてほしい、ということ。
イライラしてしまうだろうけど、なるべく怒らないであげてほしい、ということ。
母が認知症になった当初は戸惑ったり悩んだりしたけど、時間が経つにつれて「認知症の母」がノーマルになり、母を1人の意思を持った人として扱っていなかったのかもしれない。
かといって、いくら母が好きなように自由にやらせてあげたいと思っても、実際に1人で生活できない状況になっているのだし、病気はこれからも進行していくものだ。
どこまで本人の意思を尊重するべきなのか、行動を本人の意思に任せていいのか、という問題は大きくなってくるはずだ。
これからも手探り状態が続いていくんだろう。
母、兄、私、それぞれ自分の人生があるし、共倒れになるわけにはいかないのだし。
私だって自分に与えられたものの中で「より良く」生きていきたいと思っている。
私の中で「母を、穏やかな状態、気持ちで看取る」ということが、大切な使命というか願いになっているから、母のためにも、自分のためにも、そこはどうにか乗り越えたい。
追記:
私、「AIタイトルアシスト機能」を入れてるんですが……
(実際には、まるっと使用することはないのですが、ヒントにさせてもらったりすることはあります)
今回も一応ポチっと押してみたら、ソーシャルメディア向けタイトルにこんなの出ました。
「深夜の謎解き:ウロウロ母と消えたまな板 #サスペンス」
思わず笑ってしまいました。
『これ、サスペンスだったのか!笑』って。
自動アシスト機能、面白いです。
和みます。