昔の同級生から、久しぶりにメッセージが届いた。
近況と、またそのうち会いましょう、という内容だったが、受け取ってしばらくは気が重く、気持ちがモヤモヤして、なんて返信しようか悩んだ。
私の思春期は、その時期特有のプレッシャーやストレスを抱えながら過ごしていて、楽しい思い出もなくはないが、なんとなくどんよりとグレーな印象で、彼女の存在がそこに追いうちをかけている。
それまでとても仲良くしていた(と思っていた)が、ある日突然口をきいてくれなくなった。
前触れは、なかった。
話しかけると、あからさまに嫌な顔をされて、無視された。
自分が何かやらかしたのかと思い、気に障ることがあったなら謝らなければいけないと思った。
彼女に直接聞こうとしたが、まったくとりあってくれずに無視され続けた。
手紙を書いたり、グループの他の子から気持ちを伝えてもらったりした。
他の子は事情を知っているようで、「〇〇ちゃん(私)は悪くないと思う……」と同情の目を向けてはくれたが、彼女に遠慮しながら私と会話する、といった感じだった。
理由もわからず「何が、そんなにいけなかったのか」に困惑する日々だった。
彼女との会話を、何度も何度も反すうした。
最初に傷つけたのは私なのかもしれないが、思い当たることがなかったし、何をどう改めるべきかもわからず、存在そのものを否定されたようで、どんどん自分を肯定できなくなっていった。
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「無視される」というのは本当につらい。
その頃の私にとって「無視される」=「嫌われる」ということだったし、自分が嫌われる存在なのだ思うことは、毎日に暗い影を落とした。
かなり年数が経ってからその頃に撮った写真をみたけれど、ぎこちない表情で、顔も少しむくんだようで、何より目に光がない。
どのくらいの期間それが続いたのか、分からない。
その頃の記憶は曖昧になっている。
いつの頃からか、彼女に許しを請うことをあきらめたような気がする。
こちらから歩み寄る努力も、放棄した。
そういう毎日に疲れたのかもしれないし、自分が不毛なことをしていると悟ったのかもしれない。
幸いなことに他のクラスメートとの関係はそう大きく変わらなかったし、1人の無視からイジメにつながることもなかったので、乗り越えられた。
彼女とは距離を置いたまま、日々が過ぎていったと思う。
ある日突然、彼女が話しかけてきた。
1年以上、経っていたと思う。
前置きもなにもなく、まるで昨日までずっと仲良く一緒にいた友人みたいに、普通に笑顔で話しかけてきた。
ただただ、驚いた。
嬉しさも、ほっとした気持ちも湧いてこなかった。
何十年も前のことなのに、その時のシチュエーションや、私の「???」という困惑を今でも思い出せるくらいだ。
「どうして?」と問うほどの感情もなかったので、表面上は何事もなかったようにすんなりと受け入れた。
受け入れたけれど、本能レベルでバリアをはった。
彼女の立場でいえば、ようやく私を許す時期がきた(私が彼女に許された)ということなのかもしれない。
けれど、かなりの期間を無視され続けたことで、彼女は私にとって受け入れ難い存在になっていた。
人が変わったように接してくることにも理解が追いつかず、自分とは分かり合えない思考を持つ人なんだと思った。
それから数十年、没交渉の時期もはさみながら、同窓会で顔を合わせたり、数年置きに連絡がきたりして、グループで食事に行ったことも何度かある。
でも私の中で彼女は「信用できない人」のくくりのままだ。
注意深く、距離を置いて接している。
私が「友人」と呼べる人はとても少ない。
皆、何十年もかけて関係を築いてきた大切な友達だ。
社会人になってからできた友人が1人もいないが、思春期の頃のそのできごとがかなり深く関係していると思う。
「信用できる相手なのかどうか」をまず疑ってしまうし、プライベートな時間を過ごす機会は限られるので、一緒にいて心地よく思えるほど関係を深めることができない。
「いい人だ」と信用していた相手からの手のひら返し、気まぐれな態度に振り回されることを想像すると恐ろしい。
何か思うところがあったらちゃんと話してほしいし、弁明や謝罪する機会も与えてほしい。
存在を無視するくらいなら最初から親し気に関わらないでほしいし、もっと慎重に関係を詰めてほしい。
途中で失望し関係を断ちたいと思ったら、徐々に距離を置いてくれたらいいだけの話だ。
それに気がつかないほど、鈍感ではないつもりだ。
日頃、特に人間関係において、できるだけネガティブな感情に巻き込まれないように努めている。
「努めて」というのは、元々がとてもネガティブな人間だからだ。
人間関係の悩みは些細なことでもしんどいので、そういう場に長く身を置かないようにもしてきた。
「人の悪口は自分に返ってくる」を信じているし、そもそも私のまわりには人の悪口を言う友人はいない。
もし何か言われても「苦言だ」と受けとめられるくらい信用している。
彼女からのメッセージで、昔の嫌なことを思い出してしまった。
数十年も前のことを忘れられない私が狭量なのか、とも思うが、それも「あまり近づいてはいけない」という危機管理能力の一つなのだろう。
彼女には、当たり障りなく返信しておいた。
彼女としても、気まぐれに私を思い出し、送ってきただけのことだろう。
ひとときの間、不穏な気持ちがよみがえってモヤモヤしてしまった。
ブログにはできるだけポジティブな文章を残したいと思っているが、たまにはこういう日があってもいいだろう。
どっちみち、過去のことだ。
今の自分の生活には、何の関係もない。
大好きな人の顔だけ、思い浮かべることにする。